死の伝染/yumejiki
 
かった

我慢できずに外に出て 自販機で炭酸水を買って飲んだ
嘲笑うかのような雲ひとつ見えない灰色の空に あの時のような寒気を感じ
炭酸水を口の中に入れると直ぐに吐いた
幾多にも重なり連続して発生する小さな気泡が
頭の中まで侵入してくる恐怖を感じ その気泡はあの羽虫が孵化する様を連想させた
炭酸水が撒き散ったアスフェルトを見ると
何十匹もの生まれたての羽虫が背中の斑点をみせながら蠢いている気がした

あの日 木造で出来た古ぼけた駅舎から 線路を辿って 
遠くまで行こうと決心して 歩いた
小さな草花を踏みしめて 木の枝の隙間から風車小屋が見えた
灰色の空から降る霧雨に濡れな
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