死の伝染/yumejiki
 
弾き飛ばした、
まだ私にも光を見ようとする元気は 辛うじてあった
奴は転がり また地に堕ちた 奴をもっと棲ませるとどうなるか
試してみたい気持ちはあったが 胸の動悸がやめろといった
まだ爪の中には黒い異物が残っている それは奴の痕跡だ

この前病院に祖父のお見舞いに行った
祖父は脳卒中で随分前に倒れた
鼻にチューブを付けた土色の顔の男は
戸籍上はまだ生きていることになっているが
正確には脳死状態の植物人間なので 生きてはいない
母は祖父の体を一生懸命濡れたタオルで拭った
土色の肌は擦れ落ち やがて古い日本人形のような冷たくて青白い肌が姿を表した
病院の消毒液の匂いと病人の
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