中島の牛丼屋/オイタル
積もった雪をまたいで店に入ると
中くらいの幸せに乗っかった人たちが いっぱい
箸の先にお漬物ぶら下げて
あんまり忙しそうじゃないな
中島があんな歌を歌うもんだから
牛丼屋は
少し不幸な夜の人たちであふれてる
と思ってたんだけど
三十半ばのきれいな髪のお母さん
娘と息子 連れて
並二つと半盛り一つを注文
する声はちょっと低めのソプラノ
隣の席の若いカップル
猫背であごを突き出してしゃべってる
茶色の髪の体格のいいお兄さんだ 早口で
お姐さんは
顔が濃くて爪が白くて
写真のネガみたいになっちゃって
道路の向こう側の岩陰で
男たちが何人か こわいひげをな
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