労働/攝津正
 
度の収入では幾ら背伸びしても老人ホームへ両親を入れる金は出来そうにも無かった。だが、せめて病気なり怪我をした時の治療費位は貯金しておこうと攝津は思っていた。自分に出来るのはそれ位のことしかない、と思い定めてもいた。
 ともかく、どうあれ、生きているし、生きていける。そう攝津は考えた。今の仕事を続けても、やめて別の仕事(アルバイト)をするにしても、生きてはいける。そうして、生きてさえいければそれでよい、と考えた。
 攝津がデス見沢の助言を読んで寝込んでしまったのは、年齢からくるコンプレックスがあったからであった。攝津が、デス見沢や匿名の人の言うように資格を取得しても正社員での就職は難しいと判断し
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