労働/攝津正
 
動けなくなった。
 だが、よく考えてみるとそんなに落ち込む必要などなかったな、と快復した攝津は自省した。というのも、自宅の住宅ローンも後四ヶ月で終り、CDのローンも残り僅かである。ということは、四ヶ月我慢すれば、お金のことでがつがつせずとも今の月収で十分やっていける生活になる筈である。勿論、贅沢三昧はできまい。攝津は、七十四歳になる両親の為に貯蓄せねばならぬと考えていた。老いた両親は、息子に迷惑は掛けぬと常々口にするが、人生分からぬものである。迷惑は掛けたくない、綺麗に死にたい、とは誰しも思うが、しかしいつ倒れるか、病むか、事故に遭うか、障害を負うか分からぬ。年配ともなれば尚更である。攝津程度の
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