二重の空想/依々れんこ
 
 知らない夜が混ざり合っている、波は薄い肌を挟み込むように叩く、Eの弦の音、倍音、ゆるやかなビブラート。内側外側から揺さぶられて、破けた皮膚から薔薇、芯に守る赤、は香っても、ひっきりなしについてくる足が、鋭い明りへ導き、もみ消してしまう。
 
 見かけた夜が混ざり合っている、破けたソファに放り出される、この足をどこに置こうか。テーブルが低すぎるので、抱えるように隙間へ埋め込む。氷が溶けだす夢、からん、叫んだのは誰だろう……どろりトマトジュースを嚥下す。滲みだしたひらがなの端っこ、掬い取って、可愛がってくれる。

 名前を知った夜が混ざり合っている、川沿いの陸橋を行ったり来たり、水が流れるの
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