今にも落ちてきそうな空をみた/影山影司
夜空は青空に比べて随分軽い。
星が宙に空をピン止めするからだ。
山の中腹にある鉄塔にようやく辿り着いた。時間はもうあまりない。気象庁が予測した時間まであと一時間。この鉄塔はこの辺り一帯の電力の大半を送電するために必要な設備だ。申し訳程度のフェンスを乗り越え、『危険』と書かれたプレートを引き剥がす。分厚く塗装されたボルトをレンチで咥える。軍手越しにレンチがぐりぐりと手のひらに食い込む。体重をかけて、一つ一つ、ボルトを外す。
空で流れ星が一つ、線を引いた。時間だ。
留めきれなくなった空が、星で身を裂きながら落下している。
一つ、一つ、二つ、三つ、夕立のように星が降り注ぐ。
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