今にも落ちてきそうな空をみた/影山影司
 
箇所に突き刺したくらいでは鉛筆と網が絡まるだけだが、あちこちに同様のことが起こると網はテンションを失い、加重によってべりべりと裂けてしまうのと同じ事なのだ。
 道端の電信柱を見ると、随分と斜めに崩れている。コンクリィトの硬さを保持したまま、S字にひしゃげかかっているものまである。もう限界だ。おそらく夜明けにでも崩壊してしまうだろう。日は沈むべく、水平方向に近づいている。重量が寄る事で、今頃九州地方ではゆっくりと空滑落が起こり始めているだろう。目的地までまだ距離がある。この街は盆地にあり、周囲ぐるりをなだらかな山に囲まれている。隣の町から電線を引っ張るための鉄塔が、行く手にあるのだ。

 夜空
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