夜は沈黙の代価で震える/瀬崎 虎彦
 
でも
おかしいなというくらい
飲んでいる


普通じゃない
普通じゃない
普通じゃない
普通じゃない

追われているように感じて
それは具体的な追跡ではなくて
つぶやく人が
ただ自分の憎悪を口にする人が
展望もなく不満を口にする人が
それを私に向けて
次々と発信してくるから
それを聴きつづけるという
苦痛に
苛まれているから

夜の明けぬ間に
目を覚ましてしまって
まぶたを開くと
その音が響き渡りそうに
空気が沈黙している

私は追われているように感じる
私を追うことに意味はないのに
私に伝えても仕方のない苦悶を
私が解決できるはずない愚
[次のページ]
戻る   Point(8)