山田せばすちゃん『ハンバーグをめぐる冒険』について/田代深子
うものだ。そんなものではなく、忙しいなら「あちらの空いている
お席へどうぞ」ですませてしまえばよいところ、マニュアルに従って客を案内しマニュア
ルにある台詞を出任せに簡略化して言わなくてもわかるような要件を伝え、とっとと次の
仕事にとりかかろうとする、その身ぶりが、語り手に違和感と不快と孤独感を感じさせて
いる。
そんなわけでこの語り手は、「また来ていただく必要なんてありません、俺たちが望ん
でるのはただの夕飯なんですから」とばかり去ろうとする店員を呼び止め、家族の希望も
聞かず、最も日本ファミレス的な注文−ハンバーグ・コーンポタージュ・ご飯−を申し渡
す。これは言葉遣いの隅々に
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