山田せばすちゃん『ハンバーグをめぐる冒険』について/田代深子
 
も語り手は違和感に取り憑かれてしまった。そもそもこの人物にとって〈返事
もままならぬ〉状態からしてが違和のもとなのである。たたみかけられる商業用慣用句が
コミュニケーション拒否の表明だからだ。ファミリーレストランの日曜・夕食時は混雑し、
店員は目も眩むほど慌ただしい。どんなに女性店員の表情がにこやかであろうとも、その
腰つきが魅惑的であろうとも、彼女は客からの反応など一切期待しておらず、それどころ
か余計なことは何一つ言わせまいという構えである。語り手の感じる違和感は、実は店員
の「誤った言葉遣い」などに原因があるわけではない。言語の「正しい」用法などあっと
いう間に変化してしまうも
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