山田せばすちゃん『ハンバーグをめぐる冒険』について/田代深子
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“約束の地”の「ほうへ」。ハンバーグはそのとき漠然とした希求の具象となる。
ファミリーレストランの看板メニューは昔からハンバーグなのであるが、これには理由
があって、子ども達の人気料理であるにもかかわらず、家庭で忙しく作るには、いささか
面倒なのである。複雑な調理が必要なわけではないものの、玉葱の処理は手間で、挽肉を
こね丸めるには手が派手に汚れ、中まで巧く火を通すにもコツがいる。語り手は三児の父、
その妻は今日、夕食づくりにめげている。ファミレスに来て全員で、日常なかなか食卓に
はのぼらないハンバーグ、家庭の夕飯と同様みなが同じものを食べる。これは悪くない選
択だ。
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