握りしめた森に/なまねこ
 


私はちり紙を握りしめた
握っていたかけらは
それがなんだったのか
わからないまま
誰かの底へ落ちていった
悲しくはなかった
ただ
涙が流れた
心地よい熱と
冷たいあとくされを
頬に感じた
私はまた
ゆっくりと
時間をかけて洟をかんだ

握っていた
ずいぶんと重くなったちり紙を
離すと
両手には何も
残らなかった
私は自分の体を抱き
何度も滅入るほど
ゆっくりと
時間をかけて泣きはじめ
ゆっくりと
時間をかけて泣きやんだ

波風のない
誰かの悲しみを味わいながら
はやく泣きやんで
洟を
かめばいいのに
泣きやんで
何もかも握りし
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