握りしめた森に/なまねこ
 
りしめて
森に
なってしまえ
そうしたら
私がその
誰かの森を握りしめて
頬に残った冷たさを
拭ってやるのに
時間なんて
いくらもかけずに
涙を拭ってやるのに
それがなんだったのか
わからないうちに
私が

そう思った

私は
ゆっくりと時間をかけて泣き
ゆっくりと時間をかけて泣きやんだ
ゆっくりと時間をかけて洟をかみ
ゆっくりと時間をかけて指を曲げ
やわらかい動物のような
ちり紙を握った
握りしめた森に
集った
青の森に
誰かの
涙はようやく
核となって
握りしめた森に
崩れて
落ちていった

木の一本も見えない
それはなんだったのか
わからないままに
影も見えず過ぎ去っていった
悲しみは見えなかったが
また涙が
出ていた

君が
拭ってくれないのか
大人びた君の
涙じゃないのか

悲しみは見えなかったが
涙はあふれていた
それがなんだったのか
私の涙は知らなかったが
ただ
私のものではないと
思った
そうであれと
強く思った
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