かえる/あぐり
 
に鳴く )


お兄さん、
あなたの海はまっさらだったでしょう?
なんにもなかったから
あなたは
失うことを教えてくれなかったんだ
朝日が差し込んだときにわたしはこわばるからだをほどいて
隣で息を殺していたあなたを見た
それはどんなに眩しくても消えないわたしの兄で
一人しかいないわたしの兄で
触れてきた指に小さくあの海にいた頃を思い出した

なんにも知りたくないよ
お兄ちゃん、
あなたがわたしのなんなのかなんて
そんなことはもう
知りたくないよ

もう一度帰れるのなら
今度はいっしょに浮かんでいよう
産まれなかったわたしたちの妹と弟の為に
わたしたちが
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