楽園/望月 ゆき
 
広がる薄い皮膚の、その下を流れる、青く細い川に、久遠を見出すことができたなら、もうわたしは、無機物にあこがれを抱くことはしないのに。視界にフィルターをかけることで、不純物が取りのぞかれ、落ちてくるドリップの濁りない音が、わたしの内側で反響している。

 


合図を待って、細胞が拡散をはじめる。モールス信号の、その律動的な波形の、いつまでも止まない、スヌーズ。覚醒しないあなたの、耳元で、おぼえているだけの言葉をすべてならべるけれど、その直後に、短点と長点の合い間で要約されて、「おはよう」だけが、わたしにのこる。魚が、タクトを振りながら、泳いでいる。そうして、まだ明けない水の夜に、あなたの
[次のページ]
戻る   Point(8)