楽園/望月 ゆき
たの、獅子座をさがす。
皮膚に、阻まれている、いつも。その決して混ざりあうことのできない、境界線の上で、わたしたちは存在していて、足もとでは、朝がいつも、反射したり、屈折したりしている。あなたの、鼓動の、沈黙に耳をすます。呼応するパルス、そのわずかな波動が、朝ごとに生まれつづける、わたしの内側に、署名している。花が手向けられると、儀式がはじまり、錘から、解き放たれ、わたしはもう、あのほどかれた場所の、どこにもいなくなってしまう。
表面張力のグラスを、口元に寄せて、夜を飲みほすと、透明は、さらに透明を増していく。ありふれた、朝のあいさつで、外側の水位は下がり、水底は上昇をはじめる。とじていた木槿(むくげ)が花弁をひらき、やがてわたしは、わたしの死後の朝にであう。}
「狼+」17号掲載。
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