父さんがなれなかった父さんに/小川 葉
 
った

息子が生まれた今
僕は
父さんが
なれなかった
そんな父さんに
なろうと思ったのだ

荷台の息子に
楽しいかあ
とたずねると
楽しいよう
と嬉しそうに答えてくれる

けれども
ほんとうは

息子は
自動車が好きなのだ
一日中
トミカで遊んでる
その小さな運転席の窓を
小さな目で覗きこみながら
お父さんと僕が
乗ってるの
と話す
その生き生きとした目を見ると
この子もまた父さんが
なれなかった父さんに
なろうと思う
時が来るのかもしれないと
思うこともある
だから自動車を運転できない
父は
俯きながら
夕日に赤く染まり
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