満月/にゃんしー
 

財布を取り出せなかった。
無理にポケットから財布を引っこ抜くと、
手につかずに床に落ちた。

拾おうとすると、ごつい手が先にそれを拾った。
見ると、生活指導の畠山先生が僕を睨んでいた。

弾けるように外に出た。
自転車の鍵穴に強引にカギを捻じ込み
引きずるように乗り出し全開で走った。
古谷くんが大声で笑いながら自転車で付いてきた。
信号が赤に変わったけれど、ブレーキひとつかけず突っ込んだ。
耳障りの悪い、クラクションが響いた。


数日経っても、生活指導の畠山先生に呼び出されることはなかった。
他にすることもなかったので、やっぱり本屋に行った。
引き戸を開ける
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