満月/にゃんしー
を手に取った。
表紙では童顔で巨乳のメイドが悶えていた。
古谷くんは言った。
「買ったら俺にくれな」
レジに持っていって、黙ってカウンターに差し出した。
中村さんは、読んでいた小説にしおりを挟み、
ゆっくりと眼鏡の真ん中を人差し指で押し上げると
「618円です」と言った。
そこまでは全然なんでもなかった。
中村さんが処女であるかどうかとか、
それを確かめようとすることが最低であるかどうかとか、
思いをめぐらすには馬鹿だった。
だからただ、古谷くんの言ったことを淡々とやったんだ。
けれど、中村さんのすこししゃがれた声を聞くと、
とたんに顔が赤くなった。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)