満月/にゃんしー
 
を手に取った。
表紙では童顔で巨乳のメイドが悶えていた。
古谷くんは言った。

「買ったら俺にくれな」

レジに持っていって、黙ってカウンターに差し出した。
中村さんは、読んでいた小説にしおりを挟み、
ゆっくりと眼鏡の真ん中を人差し指で押し上げると
「618円です」と言った。

そこまでは全然なんでもなかった。
中村さんが処女であるかどうかとか、
それを確かめようとすることが最低であるかどうかとか、
思いをめぐらすには馬鹿だった。
だからただ、古谷くんの言ったことを淡々とやったんだ。

けれど、中村さんのすこししゃがれた声を聞くと、
とたんに顔が赤くなった。

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