わからないまま/殿岡秀秋
 
床が黒ずんでいった

ふたたび三人で電車に乗る機会がきた
母の隣にすばやくぼくは座った
今度は兄がとりのこされた
次ぎの駅で母の隣の席があいて
兄は母のとなりに座ることができた
兄がよりそおうとしても
母は手ではらった
兄の悔しそうなそぶりが
目をつむっていてもよくわかる

なぜはじめに隣にすわった子だけを
母は受けいれるのか
よくわからない

今になっても
女の人の素振りがわからない
笑顔になったかとおもうと
よそよそしくふるまう
いったいどちらなの
と尋ねたくなる

会っても
挨拶だけで
あとは無言で
ほかの人々との会話にまじって
ふと話す
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