タンポポ/殿岡秀秋
 
ずく

ぼくは口を膨らませてから
息をふきかける
それを合図に
女の子たちは風をつかんで浮きあがる

ぼくは走りながら追いかける
女の子たちは手をふってくれるが
すぐに見えなくなってしまう

また春がきて地面から
帽子の形に並んだ
白い服の女の子たちが
ぼくを呼ぶ

数十年が過ぎて
ぼくは道端のタンポポの茎を折る
茎には染みがある
すでに風に飛ばされたものが多くて
残っている綿毛はわずかだ
白さはなくなり
茶色や黄土色が混じっている綿毛を
支えるガクは水気を失って
陽に焼けた老人の皮膚になっている

タンポポが変わったのではなくて
ぼくの目が年
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