地面かみなり/オイタル
い。それから不意と、わたしの顔を見上げると、立ちあがって歩き出した。
追いかけたわたしは、右手で弟の左手を握り、そのまま、雑草が子供の膝まで届くあぜ道に踏み込む。
低い草の背の間から、濃く立ちこめる草いきれ。その中を、二人で歩く。踏み分ける雑草の先々を、さわさわと、何やら小さいものの気配が動く。かえる、イナゴ、蛾、バッタ。蒸し暑い雑草の森の中で静かに息を潜めていたものたちが、巨大な四本の足の襲来に、慌てて道を譲る。
広がる田園の中に、入道雲のように盛り上がる杉林。二ダースほどの杉たちはいかにも太く大きく、枝先は天を指す。茶色い幹に、蔓の植物が這い登り、緑のタオルを巻いたように、その面差
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