地面かみなり/オイタル
 
追いかけようと声をかけるつもりで振り向くと、弟のほうはアスファルトの農道にしゃがみこんでいる。近づくと、声をかけようとした鼻先に、顔を上げた。
「地面かみなり。」
尋常でない暑さのために、藍色のアスファルトには、ジグザグの亀裂が深く入っている。
「地面かみなり?」
「ん。」
「すごいね。」
「ん。」
 身を分けて、小さな風が吹きぬける。背の低い草が、気弱く手を振った。
「にいちゃんは?」
 見ると、兄はもう遠くの屋並の陰にその姿を隠すところだ。
「近道でにいちゃんを追っかけよう。」
 ところが、呼びかけても、雑草の根元で地面のかみなりをなぞっている弟は、しばらく返事をしない。
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