地面かみなり/オイタル
はない。
イトウのおじさんのお葬式は一週間ほど前。妻の叔母の夫であったイトウのおじさん。知り合ってまもなくの、いささか突然のさよならではあった。
暑い日で、風はそよともいわなかった。
自宅のそばの小さな寺の、薄くらい本堂の一番奥で、おじさんの写真は静かに笑っていた。五十といくつで亡くなってしまったイトウのおじさん。写真の笑顔がウインクしていた。
並んでゆっくり歩く。
巨大な「夏」が、雲一つない青空と濃い緑の地上を覆っている。遠くのあぜ道を走る自転車の子供ら。袖のない白いシャツに、茶色の麦わら帽がゆれている。セミの声が耳鳴りのように、木陰や川の面に鳴り響く。
兄を追い
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