夕暮れ/オイタル
 
に向かって、無数のオレンジ色の光芒が、放射状に高く激しく吹き上げる一瞬があるのです。空いっぱいの光の噴水です。切れ切れの雲や木々や谷間に飛沫を浴びせ、そしてしばらくその形を残した後、次第に薄れ、滲んで広がる。
 ふと後ろを振り返ると、あらゆる生き物の気配が抜け落ちた油絵のような風景、家々の屋根や電柱、緩やかにカーブする舗装道路の表面が、おぼろなオレンジ色の、不思議な気配に包まれています。
 一瞬の貧血のような風景。
 古びて動かない写真のような風景。
 風景そのものがさびて、薄く緑青をふいたような。
 黄昏時、遭魔ケ時。
 蛇行する道路も、路傍の草も、電線に結ばれたいくつかの電柱も、速
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