家族/水町綜助
 
は川で

ドンドコ川下へ流れていった

もう目で追うことはできなかったので

空想すると

すぐ海に出た

嵐の夕暮れだった

桜は白い波にのまれ

浮かぶことはなかったが

海水の中をひらひら

舞い落ちて散った

それは結局

川沿いで散るのと同じことだった



海水というのは

本当に塩辛い

一口含むと

気が遠くなる

ぎゅっと目をつむり

飲み込むと

叱られたことを思い出す

母親とか

とくに女の子に怒られたことを



夕日が海へ沈み込んでも

だいだい色の水にはならないから

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