スパイ女房/青木龍一郎
「いらねーんだよ!」と叫ぶと
親父はヘラヘラ笑いながら
「ヘヘヘ、そうですかい…いらねぇですかい…
そいつぁ、キツいですぜ?お兄様…
そうかい…そうかい…わかんなくなっちまたかぃ…
こんな弾丸飛び交う戦場の中来たと言うのにですかい…」
と言って、観覧車の方へと消えていった
その瞬間メリーゴーランドの速さは3倍になり
かかっていたメルヘンチックなメロディも
日本全国の死刑囚達が怒鳴り声で合唱した君が代に変わった。
あまりの遠心力に僕を含めた精神障害者たちは全員、外へと投げ飛ばされ
速度はさらに上昇した。
誰も乗っていないメリーゴーランドは目に見えない速さで回
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