あふれる/キキ
ないが、それらはすべて先生のためのいちにちだ。あなたが言ったから。いちにちのできごとを記録するように。眠る前に。ひっそりと、深い夜の色のペンを取って。
あたしは誤字をぜんぶ塗りつぶした。
傘。傘がひらひら回るように、くるくる回っていたあたし。足先ではじく水はきらめいて、あれが太陽、と思った。だから傘。
先生。きれいって、こういうこと?
兄はアイスを食べた。棒つきの、ソーダ味。あたしはかき氷を食べなかった。れもんといちごの区別がつかない。れもんは檸檬で、いちごは苺だ。あたしは押し黙る。父は声を荒げる。あたしに味に関する記録はない。
先生、あたしはたくさん
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