あふれる/キキ
 
さんの夏を産み出した。どのいちにちも、すべて先生のためのいちにちだ。あたしは行間にたくさん書き込んで、消しゴムは持たなかった。(過ちもすべて)、すべてを記憶するように、あなたが言ったから。

どこかで、置き去りにされた父が、水の底で潜水をする。プールの端から端まで、息継ぎなしで泳ぎきる。砂のひとつぶに書き込まれたそのような物語が、いたるところに散らばっている。

あたしの足。きれいな水しぶき。兄のアイス。父の鼻から漏れるぶくぶくの泡。なんどでも産まれてきてしまう、(生命力の強い)ちいさな生き物のよう。卵ひとつひとつが別々の色をしていても、あたしは区別がつかない。

そして雨。


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