わたしたちのsaga/伊月りさ
間前には抱かれていた肩の
熱をこそげ取るように
摩耗する通勤列車を降りて
ホームの端に展開された 未消化の色と臭いが
この目と鼻をしっかりと捉え
途端、わたしは何十時間もの位相を超える
吐きそう、になる
吐きそう、と言う
恋人の背中をさすったら
そうされるともっと吐きそう、と言った
ああ、よかった、吐けばいいのよ、そのほうが楽になるじゃない、
言い終わらないうちに
白い便器の縁を撥ね上げた
吐瀉物がわたしの頬に点、点、となって
いたのを知ったのは一時間後でした
ただそのとき、あなたが 吐きそう、と言ったときには
潤んだ瞳と、
燃えるよう
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