夜の翼/仲本いすら
硬くなっていく指先のそのさきで、
秋口のにおいをそのままに鶴を折ることも
いまはただ難しい。
遠いところから聞こえていたリコーダーの音色も
いまではもっと遠いところから聞こえる
夜汽車の汽笛ほどにもならない
私のからだを摩るひとはいない
ただ、かわりに私がやつのからだを撫でている。
焼ける。
*
数センチの隙間から見る世界は、私にとって
とても、それは、とても薄明のような光景で
時折過ぎてゆく、子ども達の声が不思議と、
風船を飲み込んだようなこの喉に響くのだ。
枕元には、しばらく漂っていた私の咳が
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