まにまに/瀬崎 虎彦
 
まにまに

君の背中に空を見上げてた
決着はすでに着いている
失うよりずっと前に君は
僕の心を連れて旅に出た

知らない街の懐かしい場所も
懐かしい街の知らない場所も
素敵なものに出会えばいつも
「君に見せたい」と言ってくれた

パリで会いベルリンで別れた
春の雪をキャンベラで眺めた
風の速さに目を細めては
移ろう時に耳を澄ます

それは果てしない波のまにまに
あなたの声を聴くように
とめどない憧れだけで
どこまでゆけるかな?
終わらない雨に打たれて
あなたが愛を知るように
重ねる別れのあとで
途方に暮れるんだ

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君の手紙を待ちわびて
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