まにまに/瀬崎 虎彦
 
びて僕は
行き先も決めず旅に出た
冷たい風のコートの襟を立てて
次の列車に飛び乗った

人気のない避暑地の駅で降り
葉を落とした白樺の木立を
はじめて訪れる場所ではない
錯覚を覚えて歩いた

僕ならば変わり映えもせずに
日々のことを音楽で紡いで
いつかどこかで 君に会えたら
聞かせたい歌ばかりつもる

枯葉のざわめきの中で ながされてしまうのに
まばたきの後に君を見つけ出すんだ

声はいつも心に留まっている
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