健やかなるときも辞めるときも/aidanico
そんな気分だ。常軌を逸っているというには余りにも当たり前で、だけれど背筋からうすらざむい風がとおるような。
ニ、知る知る見知る
おまえのなはなんというのだ。もう数十回も繰り返される質問に、未だに答えることができずにいる。名前を忘れてしまったのだろうか。まさかそんなことはない。記憶を辿るために、例えば毎朝食べる少し焦がしたトーストとヨーグルト、いつも使うシャンプーの種類、大好きな風景、一つ一つが鮮明なのに、それらを一つの枠として捉えようとするとたちまちにばらばらになって枠から剥がれ落ちてしまう。アナグラムの途中でもとの言葉がわからなくなったように、一つ一つの音は思い出せる
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