指輪/灯兎
 
ことを思ってた。」
 「辛い、恋だったんだろうね」
 「ううん、そんなことはちっとも無かったの。あたしが愛した分だけ、それよりもたくさんの、大切な気持ちをもらえたようなな気がしてるから」
 そのとき僕は、尾を引いていく飛行機雲を見ていた。この灰色の空で、そこだけは白くて、何か大切なものの通り道に見えた。
 
「あたし、あなたのことが好きだよ。知ってた?」
 まったく予感していなかったと言えば嘘になる。けれど、信じたくなかった。
 「ちゃんと言えなかったこと、すごく後悔してたんだよ。知ってた?」
 それは僕のどうしようもなさが生んだ、罪なんだ。
 「誰にも渡したくないって、今でも思
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