鰻の行方/亜樹
ちゃ。なんなら見てみるか?」
ちょいちょいと父は手招きをした。
「ええん?」
「ええよ。落ちんようにな」
おとうさんッ、と咎めるように母が父を呼んだが、まあええじゃろと父は意に介さない。敬三はといえば、そんな両親の様子を気にとめることもなく、ゆっくりとはしごを降りた。
吊るされた懐中電灯のおかげで、それほど暗くもない。外界の湿っぽい暑さは、微塵も感じられない。遠足で行った鍾乳洞の中のような、静謐な冷たさがそこにあった。
ぴちゃり、と右足が水面に届く。水は灯りに照らされながら、どこか黒く光っていた。その中に、生命の動きは少しも感じられなかった。鰻は愚か、蛙も、ミミズも、何もかもが
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