鰻の行方/亜樹
 
囲い込んで自分の獲物とするために。
 しかし、その日の敬三は運が良かった。適当に入れた手は鰻の鰭の下あたり――丁度鰻の首根っこを掴んでいた。
 どうにか逃げようともがくそれを水の上からあげると、友人たちは歓声を上げた。
 姿を見てみれば、それは大して大きくはなかったが、それでも鰻は鰻だ。鯰やひらめ(注:アマゴのこと)などとは格が違う。一躍敬三はヒーローとなった。丁度ウーウーと、町内にいれば何処からでも聞こえる低くうなるようなサイレンがなって、その日はいったんお開きとなった。家が近い子が、たらいを持ってきてくれた。それに鰻を入れて敬三は帰った。
 しかし、家についてみれば、鰻の処置に困った。
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