鰻の行方/亜樹
までを時間制限と定めた。誰かが発した号令を合図に、川童たちはめいめいそっと石の下に手を突っ込んだり、小石を積んで覆いをし、そこに魚の群れを追い込んだりした。
敬三は、木陰の大きな岩に目をつけた。川の石は、水の流れで下のほうが削られて、そこがちょうどいい魚の寝床となっている。
できるだけ波を立てないように岩まで近づくと、何の躊躇もなく敬三は手を突っ込んだ。
とたん、ぬるりとした細長いものが指に触れる。
「鰻だ!」
思わず、敬三は叫んだ。その声を聞いて、他の川童たちの動きが止まる。嘘だろなどといいながら、敬三の周りに寄ってくる。もしそれが本当に鰻で、そして敬三がとり損ねたときに、囲い
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