ジッパーで世界は隔てられている/瀬崎 虎彦
 
悪魔
喰らいながら喰らわれる
反転する内臓の悪魔

物見遊山の絶望と異邦人らしさで
足元に鳴く雪の甲高い声
まさか雪に包まれたヴェルサイユの庭園を
ランナー達と走ることになろうとは

正義があれば屠ってよいか
そのような問いの異常性を
看過したままの異常性

瞼を開いたまま危惧で固定されて
瞬きすることも出来ず縛り付けられた
それから光を失った

長い睫の生え揃った瞼も
ジッパーの隠喩に違いない
隣接し弧絶する君の悪い
世界に開いた穴に違いない

無意味に落葉する自然を裂いて
複数の人間を一つの入れ物にする
化学的な鉄槌を下して記憶しない
記憶が欠
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