ジッパーで世界は隔てられている/瀬崎 虎彦
 
でも現でもそういう不可視のルールは
同じように有効性を保つはず

ジッパーで世界は隔てられている
しかし一線を越えるのは優しい
どこでも眠れる特技の持ち主は
電車の中で悪夢を大胆に展開する

怖いというのは何が怖いのか
怖くないものが怖いときが怖く
身近なものが身近でない不気味さを
目撃するのが怖くて眼を閉じたはずなのだが

まぶたの裏側にべったりと黒人の
精液が張りついていて
でも白人の精液も張りついてて

自分の中に他人の肝臓を埋め込まれるような
隣の席に座った男の体臭を
直接血液に注入されるような夢うつつ

まだフランスにいて明日は墓地を
見に行こ
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