可変の風/長押 新
 

密生している高木が
お辞儀をしているのでした
すると明るい時間に立つのは
随分とひさしぶりだと解ります

きらきらと光りに靡いている
真っさらな仮面をつけている
その地獄のやうな風が
引きずり出すか
塗りたくられるかして
だれかの口が開かれている
空けられた口にはだれかが
生まれているのがみえる
その風の中から向かってくる
教科書に点在しているビヨンド
夕日をみた時の感動のように
私は分かりきっている
夕日すら口を開かないからだ
ビヨンドが点在している
掻きむしられた皮膚のうえに
浮き出る血しょうのやうな
朝日がそこに滲みている
あまりに肉体的なわた
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