配達/丘野 こ鳩
引用したよ、
まいにち参照した
(白い大開脚が
目の前で鰐の口になっていた)
そういうむかしばなしを
なんども読んだ
まだみんなが帰らない教室で
ページをめくり
非常階段で表紙をなでた
満月がビルディングにめり込む夜に
ボブディランを聴きながら
外灯の下で壁に
あの白い足を
河みたいに描いた
引用した
さんざんした
本ではないものからも
外のものならなんでも
なんでも読んで
自分の部屋に連れて帰って
ひとりで遊んだ
団地のベランダから、台所にまで
夕暮れが延びてきて
南の島の、鳥の歌のとおりに
まいにち
読んだものの奥付をちぎって、
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