配達/丘野 こ鳩
 
て、
船を折った

カーテンがその長い髪のように
こがねいろに炙られながら、揺れていた
ねえまだしばらく、だれも帰らないよ
とぼくは、きみの善意に伝えた

ベランダで船を飛ばす
透明な海に流された船に乗って
開かれる鰐の口にキスする
なんども転覆して空が雲のような泡を吹いて溺れる

 (
夜がぼうぼう鳴きながら
いっぱいになって飛んでくるから
むかしばなしをしよう
家族の帰りを待って
ひとりで本を読んでいたころの
とてもきれいな、彼の話を
          )







戻る   Point(2)