フィクション/夏嶋 真子
 


裸のまま寄りそって、
延々と梶井基次郎を語る彼の
腕枕が心地よくてフィクションの中にいる。

急に思いついて服も羽織らずに
冷蔵庫からオレンジを取り出し

「時限爆弾をどうぞ。」

と女の上目づかいで彼に手渡す。

彼はわたしをいつも正しく理解する。
部屋中の缶を集めて高く高く積み上げ

「これは太陽だよ。」

と言って、塔のてっぺんにオレンジを飾る。
ずっしりとした性の重みをバランスで逃しながら
不安定なわたし達の塔は完成した。

(太陽を沈ませない。)
衝動的にオレンジをつかむ。
爪をたてて力いっぱい握る。
わたしの体の一部が太
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