そのころ、それを聴いた僕たちは/水町綜助
ろん
窓を割っても落ちるだけ
ということを知っていた
*
さしあたり行くところがないので
僕たちはとりあえず
夜が来るのを待ち
影が溶けてから
街へでも出ることにした
追いかけっこをしながらやがて
アルコールが視界にうっすらと満ちて
ふらふらと歩けば
さざ波がたつほどに酔った頃
曲がり角でけっつまずいて転ぶように
女の子と知りあって
ー彼女は大抵酷い酔い方をして、
道にうずくまってえづいていた。
吐き出すものにかたちはない。
ただどうしようもなくえずいていた。
そしてこれはなんの比喩でもない―
街の光の落ちくぼんだ
市バスのロータリー停留所
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