そのころ、それを聴いた僕たちは/水町綜助
 
ろん
窓を割っても落ちるだけ
ということを知っていた



さしあたり行くところがないので
僕たちはとりあえず
夜が来るのを待ち
影が溶けてから
街へでも出ることにした
追いかけっこをしながらやがて
アルコールが視界にうっすらと満ちて
ふらふらと歩けば
さざ波がたつほどに酔った頃
曲がり角でけっつまずいて転ぶように
女の子と知りあって

ー彼女は大抵酷い酔い方をして、
道にうずくまってえづいていた。
吐き出すものにかたちはない。
ただどうしようもなくえずいていた。
そしてこれはなんの比喩でもない―

街の光の落ちくぼんだ
市バスのロータリー停留所
[次のページ]
戻る   Point(8)