帰る空/こしごえ
 
実にひかれ
いつまでもゆびをさされながら

(よこ顔はい
っそうつめたく澄んで白い暗さを
    しんわりとした重さで放っている)

しめった空気を燃やし
しろちろと波紋に揺れる
秘密の火
小さな胸の天幕を焦がす
水曜日を如雨露で石榴石にあげる
歌声を産声とまちがえた中性子が
虹をかける重く燃える秘密でくぼむ

火に滅ぶものもあれば
火に生かされるものもある
火は己に忠実なだけ
そこに罪があるか
灰のみがしる真実
いのちは、火のような魂だ
と水影が、無表情にほほえむ

暗号のけいぞくする
(はじめていたみをおぼえてから
さいごまでこの未完成なきょり
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