帰る空/こしごえ
ょりをかんじる)
風の亡霊がことばなく、密めいてしまう
森林はどこまでも深い冷徹な遠さをふくみ
われわれが、いのちを燃焼させているあいだ
われわれのしらないところから
私は、この沈黙をまもりとおすためにいま、
来た一本道を蒼蒼しながら、あるいて行かなければ
ならない。無風地帯へかえっていった
灰の記憶が、
空白をそめあげるまで
不朽のつぼみのたいないで
しずまる透明な闇を静止する
下弦のまゆ月冴えかえり
とうのむかしに雨はやみ
雲もしろがね河をながれ
遠い声は灰の記憶をつぶさになぞり
ほほえみあゆみ去るひだまりとなり
ふるさとの土に芽吹き いのる
幽光のまなざし
咲きめぐる一輪を
星雲がつみとり
私を真っすぐに照らしつづける、いとおしい、青い愛しみよ
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