帰る空/こしごえ
ほの暗い
雲のもとでたたずみ
空をつかむ
透けている火影姿のこぶしから 零れる灰が
無風地帯へかえってゆき
つかみとおすこぶしは
遠い声にもほどかれることはなく
透明なかなしみを失いつづける
うすらさむい空が晴れるのをまっている。まっている
静かに 風みちる静けさで
私は、かなしみをそめる青い空を
たちどまることなく秋りんの降る林をあるきながら
ふたたびとりかえせない彩しきを。
知っているのか
声は照らす
見果てぬ漆黒の宇宙を
私はどこへ?
か細くそよそよとあがる雲が耳をかたむける
予感のほとりで
ある喪失をすくうように、われに
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