わたしの時代/小川 葉
 

生きていたりするけれど
今ではわたしが坊ちゃんである理由なんて
どこにもありはしない

むしろわたしは
事業に失敗した父の息子として
事業を継ぎもしなかった
ろくでもない放蕩息子として
親戚だろうが何だろうが
誰もわたしを相手にしてくれない気がして

だから父と母を愛したい
何も悪くなかった
時代が少し悪かったなどと
目と目を合わせて慰めてあげたい
親不孝者の目のまま
親孝行が出来るのなら
わたしは今まで出来なかったことを
二人にはしてあげたい

息子にはわたしのような
しがらみが
もはや一つもないのだから
自分の人生を
自分の人生としてだけ

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